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FIT制度(固定価格買取制度)をわかりやすく解説。FIPとの違いも解説

FIT制度 (固定価格買取制度)をわかりやすく解説

電気代の値上げは、現在日本全体が直面している重大な社会問題の1つです。

日本は先進国の中でもエネルギー自給率が最下位に近く、国内で消費される石油などの化石燃料の大部分を海外からの輸入に頼っています。

化石燃料はそのまま用いられるだけでなく、電力を捻出するための火力発電にも用いられていて、火力発電は日本の発電のうち非常に多くの割合を占めていることから、燃料価格は電気代の上下と直結してしまいます。

そこで問題になるのが現在の国際情勢です。

世界有数の石油・天然ガス輸出国であるロシアはウクライナへの侵攻を仕掛けており、ロシアに戦費を与えてはならないなどのさまざまな要因が重なりあい、ロシアから石油を輸入することができなくなっています。

また同じく世界有数の石油輸出国であるサウジアラビアもアメリカとの関係が悪化していることから輸出量を制限しており、世界的なエネルギー不足の一因となっています。

さらに石炭についても中国が環境に関する規制を強化したことによって産出量が減少しており、化石燃料全般が不足しているのが現在の状況です。

電気代の高騰に備えるべく、国内では政府主導により太陽光発電の普及が進められてきましたが、そんな太陽光発電の利用に1つの転機が訪れています。

この記事では太陽光発電を利用していく上で必ず知っておきたい、FIT制度と呼ばれる制度について、詳しく見ていきましょう。

FIT制度(固定価格買取制度)とは?

卒FITとは?

太陽光発電を取り巻く情勢について把握するためには、まずFIT制度についてその概要を理解しておきましょう。

FITとはFeed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)という言葉の頭文字を取ったもので、固定買取価格制度という意味を持っています。

海外では日本よりも先んじて導入されていた制度であり、日本国内においては経済産業省によって、2012年7月にこの制度が開始されました。

FIT制度は太陽光などの再生可能エネルギーによって発電された電力の買取価格を固定する制度であり、併せて電気事業者には該当する電力を買い取ることが義務付けられます。

この制度によって太陽光発電を自宅に導入している家庭は、余剰電力などを電力会社に買い取ってもらい、まとまった収入を得ることができていました。

FIT制度は2019年に満了の予定でしたが、2024年現在でも続けられています。

しかし制度が変遷してきていることもあって、余剰電力の買取価格は大きく下落しており、売電によって得られる収入は大幅に減少してしまいました。

FIT制度の背景と目的

FIT制度が導入された背景には、日本国内のエネルギー事情の厳しさから、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる発電を普及させようとした政府の方針があります。

既存の化石燃料に代わる燃料資源の研究も進められていますが、実現性は不透明であり、実現できたとしてもまだ長い時間が必要となります。

しかし、太陽光はほぼ無限に得ることができるエネルギーであり、太陽光発電であれば日本国内でも制約を受けずに推進していくことが可能です。

山地などにメガソーラーを設ける形で産業用の電力を捻出していく試みなどは行われていますが、それだけでなく一般家庭における太陽光発電設備の普及を目指していくための策として用意されたのが、FIT制度でした。

FIT制度があれば電力買取という形で直接的な金銭面のメリットを得ることができるため、初期費用の回収を早めることができ、導入までのハードルを大きく下げることに役立っています。

現在の日本は世界でもトップクラスに太陽光発電が普及している国であり、その目的はある程度果たされたと言って良いでしょう。

FIT制度の仕組み

【卒FIT後の活用2】電力会社に売電し続けたい場合

FIT制度の仕組みは、再生可能エネルギー発電促進賦課金によって成り立っています。

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した発電によって得た電力を電力会社が買い取る際、その買い取り費用の一部を電力会社の利用客から賦課金として集金するという制度です。

FIT制度は消費者の出費が増える形で支えられている制度であり、現在も再エネ賦課金の徴収は続けられています。

再エネ賦課金の徴収額は値上がりしており、このことも電気代が高騰を続けている理由の一因だと言えるでしょう。

家庭用太陽光発電におけるFIT制度

太陽光発電とは?

運用においてFIT制度の影響が最も大きく現れるのが、家庭用太陽光発電です。

家庭用太陽光発電を導入した理由としてFIT制度による売電価格の保証を挙げる方は多く、発電によって得た電力が収入に直結するという仕組みは太陽光発電の導入コストを相殺する上で大きく役立っていました。

太陽光発電は導入コストが高いからこそ、コスト回収までの見通しが立ちやすいという点は大きな魅力となっていたのです。

しかし、FIT制度は永続的に続くものではありません。

家庭用太陽光発電とFIT制度の関わりについて、さまざまな角度から見ていきましょう。

今年は1kwhあたりの買い取り価格は何円?

FIT制度による買電価格は、その年ごとに変動していきます。

2024年における売電価格は、9.2〜16円/kWhです。

売電単価の推移

FIT制度の売電価格は年々下がる傾向に

売電価格の推移について見ていくと、2020年から現在までは、毎年1~2円ずつの単位で徐々に価格が下がりつつあります。

元々FIT制度が満了の予定だった2019年以前と比較するとより下落幅が大きくなり、10年前にあたる2015年時点では売電価格が32~37円/kWhだったのと比べると、その価格は半分以下に下落してしまっていることがわかります。

売電価格の推移を踏まえると、以前と比べて太陽光発電によるコスト回収が大変になったことが見て取れます。

現在公表されているFIT価格は2025年までのものですが、算定を行っている有識者会議では、海外とのコスト比較を理由として、依然としてコストダウンを目指していく方向性が打ち出されているのが現状です。

今後も売電価格は下落していくと見られており、太陽光発電の運用にはそのことを意識していく必要があります。

産業用太陽光発電との違い

産業用太陽光発電との違い

家庭用太陽光発電と産業用太陽光発電では、買取に関する制度が大きく異なっています。

産業用太陽光発電とは広い敷地を必要とする設備だと定義付けられていて、一般的に約130㎡以上面積が確保された土地や屋根などに設置されるのが特徴です。

地面に設置される野立て太陽光発電のほか、工場やビルの屋根、巨大なカーポート、水上などの敷地に設置される場合もあり、その種類は多岐にわたります。

産業用太陽光発電におけるFIT制度は出力によって運用が異なっており、出力10kW以上50kW未満の場合、原則的に全量買取を選択することができません。

比べて出力50kW以上は、全量買取を選択することが可能となっています。

固定買取価格については出力10kW以上50kW未満の場合、1kWhにつき10円で、出力50kW以上250kW未満の場合は1kWhにつき9円、出力が250kW以上に及ぶ場合は、入札制度によって決定されるのが特徴です。

FIT制度のメリット

FIT制度のメリット

FIT制度についてその全貌を正しく把握していくためには、メリット・デメリットの両面を理解しておく必要があります。

まずはメリットに挙げられる面から、順に見ていきましょう。

エネルギー自給率の向上

FIT制度が制定された目的であり、同時に最大のメリットとしても挙げられるのが、国内におけるエネルギー自給率の向上が見込めるという点です。

日常的に大量のエネルギーが消費され続けていく現代社会において、社会の発展を目指していくためにはエネルギーの確保が重要事項となります。

しかし、日本は国土からエネルギー資源がほとんど採れない土地となっており、冒頭でも述べた通り、そのエネルギー自給率は先進国中最下位に近い順位となっています。

日本が今後より一層の発展を目指していくためには、エネルギー自給率の向上を見据えていかなければなりません。

日本の土地環境であっても再生可能エネルギーは利用が可能であり、その普及を目指していく意義は極めて大きなものとなっています。

再生可能エネルギー利用の最もポピュラーな形といえる太陽光発電の普及を目指していく上で、FIT制度がもたらしたメリットは多大なものだと言えるでしょう。

環境保護の観点からFIT制度でエネルギーをつくる流れが出来ている

環境に配慮した生活をおくりたい家庭

現代社会が活動していく上で大量に消費される化石燃料は、大気を汚染し、環境を破壊してしまう大きな一因となっています。

特に化石燃料を利用することで排出される大量のCO2などの温室効果ガスは、地球温暖化を招く主因だと考えられていて、近年の地球温暖化は深刻さを増しています。

観測史上類を見ない夏場の酷暑など、私たちの身近なところでも地球温暖化の影響を感じる場面は多いのではないでしょうか。

環境保護は日本だけの関心事ではなく、国際社会全体が抱えている課題であり、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を耳にする機会も大きく増えました。

SDGsを意識することは先進国にとっての義務であり、積極的に取り組んでいくことが国家間で強く求められています。

FIT制度によって太陽光発電の普及を推進していくことは、先進国としての役割を果たす上でも大きな役割を果たしました。

FIT制度のデメリット

太陽光発電のデメリット一覧

まずはFIT制度のメリットを見てきましたが、期限が定められていることからもわかる通り、FIT制度はメリットばかりの制度というわけではありません。

次はFIT制度のデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

「再生可能エネルギー発電促進賦課金」による国民の負担

上の項目でも触れた通り、FIT制度は再生可能エネルギー発電促進賦課金という制度を前提として成り立っています。

この制度は電気代の値上げの一因となっており、ただでさえ国際情勢の影響を受けて電気代の高騰に歯止めがかからない今、より一層国民の負担を増加させる原因となっています。

太陽光発電を普及させていくことは長期的な視点で見れば役立つとはいえ、国民の負担が過度に増加してしまうことは避けなければなりません。

そのためFIT制度が徐々に縮小していき、どこかで終了することは避けられない見通しです。

発電コストが今後の課題

FIT制度を前提に太陽光発電を行っていく上で、課題となっているのが発電コストです。

太陽光発電はパネルに対して効率的に太陽光を当てることが運用の基本となり、基本的には平野部に設置されるのが望ましいとされています。

しかし、日本は国土の大部分を山林が占めているのが特徴で、山林部に太陽光発電設備を設置しようとするとさまざまなコストがかかってしまいます。

また、日本は日照時間が諸外国と比べて短い傾向があり、加えて地震や台風、津波といった災害のリスクが懸念される環境です。

普及に力を入れてはいるものの、太陽光発電に最適な環境というわけではないことから、FIT制度によって太陽光発電の普及を進めていくという選択がそもそも正しいのかという点は、今もなお議論が続けられている課題となっています。

まだその成否が明確になっていないという点も、FIT制度、ひいては太陽光発電そのもののデメリット面として挙げられるでしょう。

卒FITとは?10年で固定買い取り価格は終了する

卒FITとは?10年で固定買い取り価格は終了する

FIT制度は将来的には完全に終了する見通しとなっており、太陽光発電を利用していくのであれば、卒FITは必ず見据えておかなければなりません。

太陽光発電に関する情勢を理解していくための重要な要素である卒FITについて、詳しく見ていきましょう。

卒FITの定義

卒FITの定義は言葉の通り、FIT制度による固定買取価格制度が終了することを指しています。

FIT制度の利用をはじめてから固定価格での売電は10年間で終了します。

卒FITのデメリット

卒FIT後には買取価格が大きく下落する可能性がありますが、意識しておきたいデメリットはそれだけではありません。

FIT制度によって電力会社には余剰電力の買取が義務付けられていましたが、卒FIT後には買取の義務がなくなります。

その影響で契約更新が発生し、電力会社によっては電力の買取手続きが自動継続でない場合があり、もし継続手続きを行わずに放置していると、電力を無償で提供し続けることになってしまうリスクがあります。

また、どの事業者とも売電契約を結んでいない場合には、余剰電力の買取者が不在となってしまうことから、エリア電力会社が無償で引き受ける形となってしまうため、こちらも注意が必要です。

卒FITの影響

卒FITによって起きる影響として予想されるのは、太陽光発電の普及の滞りです。

太陽光発電を導入する際には設置コストの問題が発生しますが、今まではFIT制度に一定の売電価格が保証されることが導入の後押しとなっていました。

しかし、卒FIT後には現在よりも導入のハードルが大きく高まってしまうと見られています。

卒FIT後の対策

メリット1 停電時、自動で太陽光発電の電力を利用出来ます。

卒FIT後には太陽光発電を取り巻く状況が大きく変化していき、売電によって得られる収入は大きく減少してしまうでしょう。

既に太陽光発電を導入されている方にとって、卒FITは生活に直接的な影響を及ぼしてしまう懸念事項だと言えます。

この項目では卒FIT後にも効率的に太陽光発電を運用していくための対策について、詳しく見ていきましょう。

蓄電池を導入して、発電した電力を効率的に使う

蓄電池 アイビス7 施工事例

売電価格が下落して以降、太陽光発電を運用していく上でぜひ注目したいのが蓄電池との併用です。

太陽光発電の余剰電力を売るメリットが小さくなったのであれば、自宅で消費される電力をすべて太陽光発電の電力で賄っていく方向にシフトしていくのが有効だと言えるでしょう。

蓄電池はその名の通り電力を貯めておくことができる設備であり、貯めた電力を太陽が出ていない時間に使っていく運用を可能にしてくれます。

エコキュートの沸き上げ時間の変更

エコキュート凍結防止設定の重要性

本来であればガスで動く給湯システムを電気で代替するエコキュートは、太陽光発電との相性が良好です。

エコキュートの沸き上げ時間を電力代が安価になる深夜帯に変更すれば、電気代の高騰に対応していきやすくなります。

また、蓄電池とエコキュートを併用すれば、本来であればガス代として徴収される部分のエネルギーまでを太陽光発電で賄うことが可能となり、さらに運用の幅を広げてくれるでしょう。

電気自動車をV2Hなどで自宅充電する

V2H

太陽光発電、蓄電池との併用におすすめな設備としてもう1つ挙げられるのが、電気自動車を自宅で充電するシステムであるV2Hです。

V2Hを導入すれば太陽光発電の電力で電気自動車を利用することができ、ガソリン代を節約することが可能となります。

ガソリン代は電気代以上に燃料費高騰の直接的な影響を受けている分野であり、その費用を太陽光発電を代替することができるのは、非常に心強いと言えるでしょう。

FIT制度とFIP制度の違い

【デメリット2】 高い初期投資

FIT制度の終了は、太陽光発電が一定の普及を終えたことが1つの理由となっています。

今後は補助がなくても長期的に安定して太陽光発電が運用されていく体制を目指していく必要があり、そのためにFITに代替する制度として移行していくとされているのがFIP制度です。

以下の項目ではFIP制度に関するさまざまな情報について、見ていきましょう。

FIP制度の概要

FIP制度の概要

FIPとは(Feed-in Premium)の頭文字を取った言葉であり、電気を売却する際、そこに一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度となっています。

FIP制度が施行されると天候や時間帯別に売電の市場価格の変動が発生すると見られており、需給を見極めながら売電を行うことで、収入を増やしていくことも可能となるでしょう。

しかし、FIP制度が導入されていくには現在の市場価格の高騰が大きなネックとなります。

電力市場が高騰している環境下では翌月のプレミアムが0円になってしまう計算となり、運用そのものも複雑であることから、参加を躊躇する発電事業者も多くなると見られています。

FIT制度からFIP制度への移行については、今後の動向を見守っていく必要があると言えるでしょう。

FIT制度との違い

FITとFIPの違い

FIT制度とFIP制度はどう違うのか、具体的な差異に目を向けてみましょう。

従来のFIT制度下では、太陽光発電設備を備えて発電を行えば、条件なしで固定価格で売電を行うことが可能でした。

しかしFIP制度が施行されると、市場に発電事業者が参加する形となります。

そのため需給のバランスが現在とは大きく変化し、買取価格が固定されず、市場価格の上下動が起きるようになるというのが大きな違いです。

制度の運用がうまく行われた場合、全体の調和がとれることによって国内全体の電力システム運用のコストが低減されると予想されています。

しかし制度そのものが複雑な構造であることから、実際に運用してみなければどうなるか不透明な部分も多く、見通しが難しいと言えるでしょう。

なお、再エネ賦課金については依然として電気代に含める形での徴収が行われますが、その額は軽減されるでしょう。

改正FIT制度とその影響

改正FIT制度とその影響

FIT制度は導入されてから現在まで固定の内容だったわけではなく、2017年に1度改正が行われています。

制度の改正に際して認定制度の変更が行われ、保守・点検に関するルールなど9つの基準が追加されました。

また電力の買取先が電力会社から送配電事業者へ変更され、送電網の負荷分散が促進され、電力供給の安定性が増した点も変化の1つに挙げられます。

さらに買取価格の決定方法も変更されており、1年ごとに価格が見直されていたところから、数年スパンで買取価格が決定される形に変更となり、事業計画の見通しが立てやすくなりました。

改正FIT法は太陽光発電に偏重しすぎていた再生可能エネルギーの運用を是正し、地熱・風力・バイオマスなどを利用した発電の普及をより促していく目的も併せ持っています。

総じて従来のFIT制度の問題点を改善した、バランスの良い制度だと言えるでしょう。

まとめ:FIT制度(固定価格買取制度)が日本の再エネ普及率の上昇を後押しした

FIT制度は今日における日本の再エネ普及率向上に、大きな役割を果たしてきた制度です。

エネルギー自給率を高めていくという国家としての命題に取り組んでいくための手段として、FIT制度は有効な選択肢だったと言えるでしょう。

しかし、普及率の高まりや燃料価格の高騰などを受けて、卒FITの時期は確実に近づきつつあります。

電力にまつわる社会の動向を理解し、電気と適切に向き合っていくためには、FIT制度に今後もしっかりと目を向けていきましょう。

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